高専教育の特徴

 高専における教育期間は5か年である。この限られた期間に本校の理念を達成するため、5年間を貫いた計画的な授業編成によって教育を行っている。
 授業科目は一般科目と専門科目に大別することができる。

?一般科目:高専で過ごす5年間は各人が自立した人格を形成するための重要な時期である。一般科目は、専門科目の基礎及び一般教養を与えるとともに人間性を豊かにするためのもので、高専においては、高等と大学教養課程との間に見られる授業の重複を排し、系統的なカリキュラムにより、質の高い教育を行っている。その際、数学・基礎科学といった工学の基礎になる素養を重視するとともに、日本語及び英語を通じてのコミュニケーション能力も、技術者として身につけるべき重要な事項と考えている。さらに体育・文化・技術の自主的な課外活動をも奨励し、そこにおける学生と教員あるいは学生相互の人間的なふれあいを通して、精神的にも肉体的にもバランスのとれた健全で豊かな心を持った人格形成を心がけている。

?専門科目:高専での教育の使命は、社会に貢献できる技術者の育成である。専門科目は、高い水準の充実した内容を精選する一方、講義中心の知育に偏した従来の大学教育に対する深い反省の上に立って、低学年のうちから実験・実習を課し、技術の実際に触れさせることによって、技術の何たるかを理解し、エンジニアリング・スピリットを体得した専門技術者としての能力を育成することを目指している。このような実践的な学習は、身体頭脳共に柔軟な低学年から、専門的知識をある程度習得した高学年まで継続的に行うことが望ましく、実際に本校のカリキュラムもこの意図に沿って編成されている。技術の発展はめまぐるしく、かつ社会の変化によって流動的である。そのような現代社会を技術者として生き抜くには、広い視野を持ち、自分の頭で考え、与えられた課題を自分の力で解決してゆく能力が求められる。その育成のためには、基礎的な学力と実践的経験とのバランスが重要である。理論、その応用及び実技を含む専門科目と多様な一般科目を、各学年に適切に配し、5年間一貫教育を行っていることが、通常の高校 ? 大学のコースとは異なった本校の高専教育の大きな特徴である。

久留米高専の学生に望む

(1) 行動を通して人間性、社会性、国際性を養おう

・人間ひとり一人は、異なった考えや人格をもっている。全員が楽しい学校生活を送るために、豊かな想像力をもってそのことを理解し、常に笑顔で声をかけ合って、相互を認め合い理解を深めよう。

・学校は一つの社会である。社会人として守るべき基本的なルールやマナーを学び、お互いにそれを守ろう。

・21世紀はグローバル化の時代である。外国人とも積極的に接し、国際感覚を身につけよう。そして、世界にはいろいろな民族が生き、誰もが幸福な生活を望んでいることを理解しよう。

・かけがえのない地球の環境を維持してゆくことは、人類全体の使命である。川に野に山に満ちあふれる生命と共存する工夫をしよう。

(2) 工学の基礎学力をしっかりと身につけよう

 21世紀は価値の多様化と国際化の時代である。このような時代にあっては既存の知識、情報の陳腐化も極めて速く、卒業後にすぐに役立つた知識が、数年もたたないうちに時代遅れになってしまうこともある。一つの技術の寿命が人間の働ける時間よりも短くなり、その結果一人の人間が一生の間に何回も専門を、場合によっては職業すらも変えざるを得なくなることも起こる。このような場合、直ちにそれに順応し、新しい知識を吸収し、あるいは自ら新しい知識を生み出し、新しい環境に創造的に取り組んでいかなければならない。そのためには、いつになっても必要で、かつ、かわることのない工学の基礎を在学中に十分に理解し、これを自分ものにしておくことが重要である。

(3) 創造性を身につけよう

 科学技術立国は我が国の基本方針であり、これまでにもそれによって日本は他に例を見ない高度の経済発展を遂げてきた。しかしながら最近では、近隣のアジア諸国の追い上げも激しく、21世紀の知識社会を生き抜き、フロントランナーとしての地位を維持するために、今我が国の工業界が求めているのは、創造性のある技術者である。創造性は、頭脳の柔軟な若い時期に養わねばならない。このため高専においては、低学年から自立の精神を重んじ、実験・実習を通して自分で体験し、自分の頭で考え、問題を解決していく能力を養い、若年のうちから創造性を涵養する素地を作ることを目指している。また高専にあっては、大学受験勉強によって、若い時の創造性の芽がつみ取られることもない。
 人間の知的活動の源泉は好奇心にある。常に新鮮な好奇心をもって外界と接して欲しい。不思議と感じ、驚き、そして何故だろうと考えることから創造性の芽が膨らむ。また、創造性は言葉だけで教えられるものではない。それは、一種の極意とか秘伝のようなものに似ている。学生諸君は、卒業研究等における教員との個人的な接触を通じて、これを体得して欲しい。

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 すべての久留米高専生が、常に新鮮な知的好奇心を燃やし、自分で考え、高い志をもって自分の力で行動し、世の中を明るくし、世のため人のために貢献できる技術者に育つことを期待している。またこの5年間に社会人に求められる基本的な素養を身につけつつ心身を鍛え、一生つきあえる多くの友達を作り、楽しい学園生活を送って欲しい。